白河夜船

tsubakichann

2010年07月09日 19:56


部屋にある本を何となく手に取って、読み出したら、止まらなくなって一気に読んでしまった。
吉本ばななの「白河夜船」というお話。

短編の短いものだけど、この話を始めて読んだ時、確か中学生の時だったかな。
主人公と彼との複雑な不倫の話、親友との別れ、そんな人間模様が、不思議な空間の中
淡々と語られてゆく、このお話。

中学生の頃は、この不思議な世界にとりつかれ、不条理ではあるが、人間の死や不倫を
夢の国のおとぎ話を読むように、熟読したものだ。

で、今日何気なく手に取ってみたら、怖いぐらい主人公の心情がリアルで、決して泣かせる
話ではないのに、読みながらうるうるしてしまった。

実際に、親友を亡くしたワケでもないし、眠り病にかかったわけでもないし、彼の奥さんが
植物人間になっているワケでもない。
主人公と状況や関係は、全然違うし、私の勝手な思い込みも入ってると思うのだけど、
何と言うかそういう所ではなくて、そんなつもりではなかったのに、その人を好きになって
しまった、やめればこんな思いしなくていいのに、自分でその道を選んでしまう。
そして、そんな気持ちを他人に話しても、真剣に聞いてもらえるワケがない。

そんな複雑な気持ちを、よくぞここまで形にしてくれた、といった安堵感だろうか。
この本を読んで、こんな気持ちになる日が来るなんて、自分でもびっくりしてしまった。

音楽や本や映画って、そういう割り切れない人の心を形にしてくれるからとてもありがたい。
そして、そういうものに出会えた時、心の底から、嗚呼、私ここにいてもいいんだなって、
思う事ができる。

しかし、中学生の頃の私は、一体この話の何に共感していたのだろう。
今となっては、そちらの方が、ナゾである。
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